会長挨拶


日本睡眠環境学会は、鳥居鎮夫先生を初代会長として、「良い眠りをどのように作り出すか」をテーマに発足し、今日まで睡眠を取り巻く環境と諸問題について多岐にわたる研究を行ってきました。

 

これまで、睡眠の問題は脳・心身健康の維持・増進や能力発揮などと関係する生活課題として捉えられることが少なかったようです。心身の健康と密接に関係する睡眠問題の予防や対処は、本人の心身健康、能力発揮、魅力発揮のみならず、かかわる家族や専門職のウェルビーイングを考える上でも重要です。睡眠環境の調整は、ライフスタイルの修正が必ずしも容易でない方にも有効です。睡眠の不足や悪化は、人らしくあるために大切な前頭葉の働きを弱め、感情コントロールや他人の気持ちを推し量る能力にも影響を与えます。24時間社会を迎えた現代においては、いま一度、睡眠の大切さ、人間本来の身体のリズムに やさしい生活スタイルについて見直す時期なのかもしれません。

 

本学会では、睡眠環境を夜間の環境に加えて、日中の活動と環境、人を取り巻く環境や社会環境も含めて考えます。睡眠環境に関する正しい知識や最新の研究のみならず、睡眠研究に携わる幅広い最新の研究成果や睡眠の可視化や睡眠教育、睡眠マネジメントのための様々なツールやアプロ―チ、睡眠を取り巻く環境課題と睡眠支援、地域活性化などについての議論も大歓迎です。産官学連携という言葉をよく耳にしますが、本学会は、アカデミアと業界、地域行政、そして地域で日常を暮らす人々、様々な地域人材、ボランティアをつなぐ役割を担えればと思っております。

 

幸いなことに、この睡眠環境学会は会員の皆様の専門分野が多様であり、学際的な特色を備えています。そのため、睡眠を糸口とした健全発達、子育て支援、プレゼンティーイズム対策、健康寿命の延伸、介護の快適化、災害対策、ウェルビーイングの実現を視野に入れ、社会実装に向けて示唆を促す実践例や知見にも期待できます。

 

日本睡眠環境学会が、今後、取り組むべき生活課題や社会的課題、近接科学領域との協働に向けた展望など、未来をつなぎ、会員の皆様とともに睡眠を切り口とした健康づくり、ひと・まちづくり、製品開発、地域創生に貢献できれば幸いです。

 

 

一般社団法人日本睡眠環境学会

学会長 田中 秀樹